思考断片
リテールベーカリーの数は、20年以上にわたって、減少傾向が続いている
東京商工リサーチの調査によると、原材料価格の上昇や原油価格高騰に伴う光熱費の負担増加などが原因で、2023年度のリテールベーカリーの倒産件数が過去最多を記録したという。
私がブランスリー報道社を設立した2000年には、NTTが出しているタウンページに掲載されていた「パン店」は、1万6000軒前後だったが、現在iタウンページに掲載されているパン店の数は1万軒を割っている。
20年以上にわたって、減少傾向が続いているということになるが、10年後、20年後はどうなっているのだろうか。減少傾向がいつまで続くかはわからないが、パン消費の質の変容は、どんどん加速されていくのではないだろうか。
パンのオンライン販売がさらに普及し、個人向けにカスタマイズされたパンのオーダーや、サブスクリプションモデルがさらに一般的になるだろう。また、パンの製造過程や素材のトレーサビリティーがスマホアプリで確認できるようになるなど、消費者がパンを一層安心して購入できる環境が整備されるかも知れない。
大手卸しやチェーン店が引き続き主流である一方で、地域に根ざした個性的な小規模ベーカリーの需要も高まり続けるだろう。消費者は、独自のレシピで地元の素材を使って作るパンにさらなる価値を感じ、地域ごとのユニークなパン文化が育まれてくるに違いない。
リテールベーカリーは、ある時期までは数は減り続けるかも知れないが、消費者に本当に価値がある商品を提供できる能力のあるリテールベーカリーが生き残り、ひょっとしたら、リテールベーカリー全体の市場規模は今より拡大するかも知れないし、切にそう願う。
[2024/10/22]