思考断片

ここ数年で数多くの値上げを実施してきた経験は、パン業界にとって掛け替えのない知見になったのではないだろうか

 

ブランスリー2024年5月号で「原材料高騰と原価管理」のテーマで取材した「パラオア」では、クロワッサンを原材料や製法を一切変えずに10%値上げしたら、販売個数が増えたそうだ。

全く同じものを価格を上げて販売したら、販売数量は減るというのが、世の常だと思っていたが、世に中はもっと複雑は法則に従って動いているようだ。

オーナーシェフの池口康雄さんは「それが『適正価格』だったのかはわからないが、値上げする事で逆にイメージが上がり、品質の高さを伝える事ができたのかも知れない」と話していた。

パンの価格に変更を加えた時に、その売れ方がどう変わるかは、数多くの条件が複雑に絡み合って決まるので、あるベーカリーでの成功事例が、別のベーカリーにそのまま当てはまるかどうかはわからない。

パラオアの多くの顧客には、値段を上げたことで、クロワッサンの価値がより伝わりやすくなったということになるのだろう。立地条件が違い、違う属性を持った顧客を抱えているベーカリーでは、まったく逆の結果が出る可能性も十分にある。

パンの値上げや適正価格について、否が応でも考えざるを得ないご時世になって、数多くのベーカリーが、様々な知恵を絞っていると思うが、値上げした後に店の売り上げ構成がどうなるかは、実際に値上げをしてみないと分からないというのが現実だと思う。

その意味で、ここ数年で数多くの値上げを実施してきた経験は、パン業界にとって掛け替えのない知見になったのではないだろうか。

[2024/04/21]

INFORMATION

小平隆一
(James Odaira)
株式会社ブランスリー報道社
代表取締役社長

青山学院大学英米文学科中退
武蔵野美術大学油絵学科卒業

東京都世田谷区在住
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