思考断片

決算時の原価率に安心することの危うさ

 

ベーカリー経営者の中には、年に一度の棚卸の時に判明する全体の原価率をチェックするだけで、「原価管理はできている」と錯覚してしまうケースがあるようだ。

あるオーナーは「決算時に原価率が分かるからそれで代えている」と語ったが、これは経営の本質を見誤った考え方だと思う。棚卸とは、普段の努力や戦略が数値として現れる「通信簿」に過ぎず、それ自体が原価管理ではない。

個々の製品の原価率を正確に把握せずに商品ラインナップを組めば、利益を圧迫する人気商品を優先し、本来収益性の高い地味な商品を軽視するという判断ミスにつながる可能性もある。

したがって、「このフィリングは他の商品にも使えるか」「仕入れ先の見直しでコスト削減できないか」「製造工程の工夫でロスを減らせないか」といった視点で、日々原価と向き合う姿勢が必要だ。

年に一度の棚卸で問題に気づくようでは手遅れだ。原価管理とは日々の判断の積み重ねのことであり、決算時の帳尻合わせだけでは原価管理をしているとは到底言えない。

パンを丁寧に焼き上げるのと同じように、数字にも誠実に向き合う覚悟が求められる。日々の原価管理の継続こそが、安定した利益と品質の両立を可能にし、経営を真に強固なものとするのだ。

[2025/08/21]

INFORMATION

小平隆一
(James Odaira)
株式会社ブランスリー報道社
代表取締役社長

青山学院大学英米文学科中退
武蔵野美術大学油絵学科卒業

東京都世田谷区在住
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