その他

ブランスリー報道社の記事作法(1)

 

 ブランスリー報道社は、社名に「報道」とあることからもお察しいただけると思うのですが、報道の精神を大切にしている会社です。主に戦後の日本が培ってきた「新聞ジャーナリズム」に則って取材執筆活動を行っています。

 この連載では、当社が当社の記者に課している、記事を執筆するに当たっての決まり事について、記していきたいと思います。

 まずは、書かれている文章が日本語として正しいことがすべての始まりです。特に日本語が論理的に破たんしていないかを厳しく問います。日本人であれば、生まれたときから日本語に接してるので、正しく書けて当たり前だと思っている人も多いかも知れませんが、実際はそうでもありません。

 文章を書くことを職業としていない人が多少おかしな日本語を書いてしまうのは仕方がありません。しかし、新聞記者のような文章を書くことを職業とする人たちが、正しくない日本語を書いてしまうのはかなりまずいことです。

 文章を書くのが得意な一般人と、プロのジャーナリストとの間には、埋めがたい溝があります。わかりやすく例えていうと、プロ野球チームのレギュラー選手と、野球が得意な一般人の間に存在するぐらいの大きなギャップがあります。日本語を書くという行為は、誰しもが日常的に行ってることなので、その差が、野球の場合ほどわかりやすくないのです。

 「(前略)現在ではイギリス、中近東、アジア、欧州など32カ国で展開し、(後略)」。これは、ある業界紙の記者が実際に書いた生原稿です。この原稿を添削することで、正しい日本語の文章を書くということがどういことなのかがわかって頂ければ幸いです。

 まず、中近東とアジアは地域であって、国ではありません。ですから、「イギリスなど32カ国」は正しくても、「アジア、欧州など32カ国」は誤りです。「アジア、欧州などの32カ国」なら正しいでしょう。

 次に、イギリス、中近東、アジア、欧州を並列であげていますが、そもそも、こういう場合は、それぞれの語が国なら国で、地域なら地位で揃っていなくてはなりません。

 イギリス以外にどんな国があるかを追加取材して調べ、例えば「イギリス、フランス、イエメン、イスラエル、中国、日本など(の)32カ国」とするか、国名はあげずに「中近東、アジア、欧州などの32カ国」とすべきです。

 ただ、これら2つの修正例のいずれの場合も、取材して知りえた情報のすべてを伝えていません。重要なことをきちんと伝えれば、すべてを伝える必要はないとは思いますが、前者の場合、もし地域に重要性があるなら、32カ国が所属する地域について、新たに文章を立ててもいいでしょう。とはいっても、「イギリス、フランス、イエメン、イスラエル、中国、日本」と、欧州、中近東、アジアの各地域から2カ国ずつあげているのですから、これをもって3地域は伝えているともいえるかも知れません。

 後者の修正例の場合は、32カ国がいずれも、中近東、アジア、欧州のいずれかの地域に属していることは伝えていますが、具体的な国名はひとつもあげていません。イギリスだけはわかっているのですから、もし追加取材ができない状況のときに32カ国のうちの1カ国がイギリスであること伝えるとしたら、どうしたらいいでしょうか。最初に題材としてあげたある業界紙の記者が書いた生原稿は、そもそも、これを目指したものだと考えられますが、如何せん、日本語の文章として成立していません。

 もし、当社の媒体に掲載するなら、この場合は、「イギリスなどの欧州の国々と、中近東、アジアの国々をあわせた合計32カ国で展開し」とするでしょう。

 少し説明が長くなってしまいましたが、このように、まずは、正しい日本語、論理的に破たんのない日本語をきちんと書くことがすべての始まりになります。

(続く)

[2014/11/25]

INFORMATION

小平隆一
(James Odaira)
株式会社ブランスリー報道社
代表取締役社長

青山学院大学英米文学科中退
武蔵野美術大学油絵学科卒業

東京都世田谷区在住
こののアバターは、ネット空間における社長の姿です。J社長と呼んでください。積極的に情報発信をしていきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

J社長の出演動画